「体幹トレーニング」というものを聞いたことがあると思います。
体幹トレーニングは決してアスリートやトレーニング愛好家だけのものではなく、一般の方も実施した方がよいトレーニングです。
アスリートはパフォーマンス向上のため。
一般の方は、「日常生活の質を向上する」ため。
しかし、体幹トレーニングはただ形だけ真似して行えばいいものではありません。
トレーニングの実践前に、まずは体幹の役割と、正しい姿勢について知りましょう。
この記事を見て分かること。
体幹の役割
正しい姿勢について
競技パフォーマンス向上のみならず、QOL=生活の質を高めるために、正しく体幹トレーニングをするための準備をしましょう!
体幹とはなにか
体幹とは、文字通りカラダの幹となる部分で、「頭部/肩甲帯/胴体部/臀部」と、広範囲にわたります。
逆にいうと、腕と脚を除いた部分は、そのほとんどが「体幹」に含まれるということです。
少し深堀しますので、「詳しく知りたい方」はこの先も読んでください。
この体幹をさらに、「インナーユニット」、「アウターユニット」と分けてみます。
インナーユニットとは
「インナーユニット」は、体幹の中でもさらに軸となる「腹腔」のことを指します。コアなどと表現されることもあります。
正しい呼吸をするのに必要な筋肉であったり、体幹トレーニングを実施する際の姿勢・動きの土台となる重要な筋肉が4つあります。
- 横隔膜
- 腹横筋
- 多裂筋
- 骨盤底筋群
腹腔をドームに例えると、屋根にあたるのが「横隔膜」、支柱にあたるのが「多裂筋」です。
そして、ドーム全体を覆う膜が「腹横筋」、フィールドに位置するのが「骨盤底筋群」です。
このインナーユニットが上手く働かず、形だけマネして体幹トレーニングをしても、効果を出すことは難しいです。
「腹圧を高める」「お腹を閉める・力を入れる」という場合、このインナーユニットを働かせるといった意味合いで使われます。
アウターユニットとは
「アウターユニット」は、おそらくトレーナーや理学療法士など、フィットネス・リハビリ等の分野を勉強されている方でないと聞いたことがないかもしれません。
アウターユニットの名の通り、インナーユニットよりも外側、そして広範囲に分布しております。
- 後斜系(広背筋と大殿筋)
- 前斜系(外腹斜筋・内腹斜筋と反対側の内転筋)
- 後縦系(脊柱起立筋、胸背筋膜深層部、仙結節靭帯、大腿二頭筋)
- 外側系(中殿筋と・小殿筋と反対側の内転筋)
※後縦系は深層部のため、画像なしです。すみません。
特徴としては、対角線上に位置していること。
このようにクロスしている構造が、安定化のための面白い機能なのです。機会があれば触れたいと思います。
体幹の役割とは
体幹の役割とは、「姿勢の安定」や「手足を動かすための土台」となる働きを担うことです。
体幹の役割についても、インナーユニットとアウターユニットに分けてみてみましょう。
インナーユニットの役割
インナーユニットは、腹圧を高めることで正しい姿勢を保ち、力の伝達をスムーズにする役割を担います。
人が手足を動かすとき、まずどこの筋肉から動き始めるかというと、じつはこのインナーユニットなのです。
手足を動かす場合、インナーユニットが働いて安定した土台が作られ、その後手足に力が伝達されるという順番があります。(フィードフォワードシステム)
例えばジャンプをするとき、床がコンクリートであれば、蹴る力の反発力が生まれて高くジャンプすることができます。
しかし、ドロドロの沼地でジャンプをした場合には、蹴る力がそのまま沼地に伝わり、脚がぬかるみに埋もれます。
体幹が強く、しっかりと働かせられる人は、コンクリートでのジャンプです。体幹が土台としての役割を担って、パワフルに手足を動かすことが可能になります。
逆に機能不全に陥ってしまっている場合にはドロドロの沼地なので、手足で発揮する力を体幹が受け止めきれなくなり、発揮する力や動作が不安定になってしまうのです。
バランスをとる、物を拾うなどの簡単な動作でもインナーユニットは働きますので、一般の方にも体幹トレーニングは必要というわけです。
下記の記事も、体幹にまつわる面白い話を載せてますよ♪
もうひとつは、腹圧を高める事で、骨盤周りや背骨を正しい位置に安定させてくれる働きです。
骨盤(の中にある仙腸関節)はストレスがものすごくかかる部位です。
上半身と下半身をちょうど真ん中で支えているため、上半身が落ちる下向きの圧力と、下半身によって地面から反発される上向きの圧力を両方受けています。
腹圧を高める事でその圧力をしっかりと受け止めてくれて、正しい姿勢を維持するのに役立っているのです。
アウターユニットの役割
アウターユニットも安定性に関わるシステムですが、とくに「動作において起こる圧力」に対して骨盤帯を安定させる役割があります。
4つの「〇〇系」を紹介しましたが、「後斜系」は推進力を効率よく使う役割。「前斜系」はカラダの前側を安定させ、上半身の力を効率よく使う役割。
そして「後縦系」は、背骨を安定させて効率よく推進力を生み出す役割。「外側系」は、片足バランスなどの時に骨盤と上半身を安定させる役割。
少し難しくなってしまいましたが、歩く・走るなどのシンプルな動作でも働く機能ですし、ボールを投げる・打つなどの動作でも働く機能なのです。
動作に安定性と効率性をもたらせるといったところですね。
正しい姿勢とは
体幹トレーニングを実施する際にでたらめな姿勢で実施すると、ケガにつながったり、効果が半減することにも繋がります。
「正しい姿勢」とは、絶対のものではなく目的や団体などによっても変わってきます。
正しい姿勢の一例として、アメリカに存在する「トップアスリートのトレーニング施設」で用いられている姿勢を紹介します。
今回は上半身についてのみ。
まずは直立姿勢を作りましょう。
その状態で、背中に長いバーを当てます。(長いバーがある方は実際にやってみてください)
バーとの接地点は①後頭部、②肩甲骨の真ん中、③仙骨の3つ。
そして、3点が設置している状態で、首の後ろと腰の後ろに手のひら1枚分の隙間がある状態を作ります。
※画像の男性はアゴが上がっているため後頭部が接地していません。直立姿勢だとアゴを引きやすいですね。
さらにこの状態でインナーユニットを働かせます。
鼻から大きく息を吸い込んだら、口からゆっくり息を吐ききりましょう。
息を吐くにつれて、肋骨が閉じていくのがお分かりかと思います。
「アブタイト」などとも言いますが、これが腹圧が高まりインナーユニットが働いている状態です。
肋骨の動きが分からない、あるいは閉じないという方は、体幹トレーニング以前に呼吸トレーニングが必要。
正しい呼吸⇒正しい姿勢⇒正しい動作(やトレーニング)というのが理想の段階です。
インナーユニットが上手く働かない方は大勢います。
これは、単に動かし方を知らないということがほとんどです。
「風船を膨らませる」だけでも、インナーユニットを働かせる一助になりますし、ウエストを引き締める効果もありますので、気になった方はチャレンジしてみてください。
まとめ
体幹トレーニングは、アスリートだけではなく誰にでも必要なトレーニングです。
しかし、形だけマネても効果につながらない恐れがありますので、体幹の位置と体幹の役割を知ることは大切です。
体幹はインナーユニットとアウターユニットに分けられ、それぞれに役割が存在します。
特にインナーユニットは体幹の中でも軸となる部分で「コア」と呼ばれることもあり、姿勢の安定性にも関わります。
本文では触れませんでしたが、インナーユニットは「呼吸」に大きく関わる筋肉でもありますので、正しい呼吸をすることが、正しい姿勢を作ることになり、正しい姿勢が正しい動作につながります。
体幹トレーニングを正しく効果的に実施するためにも、体幹の役割を知って正しい姿勢を身につけましょう。
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